F512M
512TRが登場したわずか2年後、1994年5月のパリ・サロンで、テスタ系の最終進化モデルとして発表された。
FはFerrari、512は5リットル12気筒、Mはイタリア語で改良を意味する「MODIFICATA（モディフィカータ）」の頭文字であり、
1971年の世界スポーツカー選手権で、ライバルのポルシェ917と壮絶なバトルを繰り広げた512Mを連想させる。
後継モデルのマラネロがフロントエンジンとなったため、V12エンジンをミッドに積む最後のフェラーリでもある。
エクステリア・デザインはピニンファリーナ社によるもので、512TRから大きく変化した。ノーズにあるグリルのデザインが広く薄くなり、
ブレーキ冷却用のダクトが中央寄りに設けられ、V8モデルの355のようにウインカーとフォグランプがそれぞれ独立したデザインになった。
ヘッドライトはリトラクタブルが廃止され、ヘラー社製の固定式に変更。ポップアップ時の空気抵抗を減らすと同時に、
軽量化にも貢献している。ボンネットはグリル幅に合わせたプレスラインが廃止され、なだらかなラインになるとともに、フロントウィンドウ前の
左右に室内へのフレッシュエアを導入するためのNACAダクトが追加された。デザインは変わらないが、
512TRではブラック仕上げだったエンジンフードが、テスタロッサ同様、ボディ同色になった。リアのテールランプは、スリットが廃止され、
フェラーリ伝統の丸型4灯が復活。それに伴ってグリルもスリムになり、リアバンパーの形状も変更され、印象が大きく変わった。
テールランプのセンター部分は、外側がウインカー、内側がバックランプとなっている。
エンジンは、エアクリーナーのカラーリングが変わっただけで同じに見えるが、実は大きく進化している。
排気量やボア×ストロークなど、基本的な構造に変更はないが、圧縮比と燃焼効率の向上を狙って、ピストンは鍛造アルミニウム製に変更され、
燃料室の形状も改められた。さらに、コンロッドがチタン鍛造製に変更。この新設計のコンロッドは、実はテスタロッサから
512TRにモデルチェンジした時に導入を計画していたが、開発が間に合わなかったもの。
この新型コンロッドを組み込んだエンジンは、F131G型と名付けれた。そのほか、クランクシャフトやメインベアリングも軽量なものになり、
吸排気システムもデザインを修正。燃料噴射装置のボッシュ社製モトロニックM2.7もセッティングを変更され、
最高出力は12PSアップの440PS/6750rpm、最大トルクは0.9kgmアップの51.0kgm/5500rpm。最高速度もわずかに向上し、315km/hをマークする。
ギアレシオはクローズ化されるとともに、クラッチにセルフ・センタリング・ベアリング付のアルミニウム製スレーブ・シリンダーが採用された。
サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーンで変更はないが、セッティングが見直されている。
前後ベンチレーテッド・ディスクのブレーキ･システムは、新たにボッシュ社製のABSが追加された。512TRからサイズの変更はないが、
18インチのホイールは冷却効果を考慮し、タービンタイプの専用デザインを採用。スピードライン社製で、2ピース仕様になっている。
タイヤはピレリ社のPゼロシステムで、サイズはフロントが235/40ZR18、リアが295/35ZR18を履く。
インテリアは、不評だったセンターコンソールのオドメーターとトリップメーターがメーターナセルに戻されたほかは、512TRから変更はない。
なお、オプションでカーボンバックのバケットタイプ・シートも用意されていた。
512Mは、1996年に後継モデルのマラネロにバトンタッチ。最後のミッドシップV12としておしまれつつも、478台で生産終了となった。
独立したウインカーとフォグ |
なだらかになったボンネット |
新デザインのホイール |
ボディ同色になったエンジンフード |
■Specification
| 発表年 |
1994 |
| 生産年 |
1994〜1996 |
| 生産台数 |
478 |
| シャシー |
鋼管スペースフレーム |
| 全長×全幅×全高（mm） |
4480×1976×1135 |
| ホールベース（mm） |
2550 |
| トレッド前後（mm） |
1532/1644 |
| 車両総重量（kg） |
1455 |
| エンジン |
水冷180度V型12気筒DOHC48バルブ |
| ボア×ストローク（mm） |
82.0×78.0 |
| 総排気量（cc） |
4943 |
| 燃料供給 |
モトロニックM2.7 |
| 圧縮比 |
10.4 |
| 最高出力（PS/rpm） |
440/6750 |
| 最大トルク（kgm/rpm） |
51.0/5500 |
| エンジン搭載位置 |
ミッドシップ縦置き |
| 駆動方式 |
後輪駆動 |
| トランスミッション |
5速MT |
変速比 1速
2速
3速
4速
5速
最終減速比 |
2.920
1.880
1.420
1.090
0.970
3.570 |
| 0→100km/h（秒） |
4.7 |
| 0→400m(秒) |
12.7 |
| 0→1000m（秒） |
22.7 |
| 最高速度（km/h） |
315 |
| ステアリング |
ラック＆ピニオン |
| サスペンション |
前後ダブルウィッシュボーン |
| ブレーキ |
前後ベンチレーテッド・ディスク |
| ホイール |
8J×18（F）、10.5J×18（R） |
| タイヤ |
235/40ZR18（F）、295/35ZR18（R） |
| 乗員定員（名） |
2 |
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