Ferrari  Berlinetta Boxer




365GT/4 Berlinetta Boxer
最高速度300km/hを掲げるランボルギーニ・カウンタックLP400が、1971年3月に登場。
最速のロードカーの座を守るために、半年後のトリノ・ショーでプロトタイプが発表された、フェラーリのフラッグシップ・モデル。
ただし、展示されたのはフェラーリではなく、ピニンファリーナのブースだった。デザインを担当したのは、レオナルド・フィオラバンティ。
当時、ピニンファリーナには風洞実験室がなかったため、トリノ工科外大学の風洞実験室を使い、空力も配慮されている。
Cd値は0.38と、当時としてはかなり優秀な数値を達成していた。
365という名称は、当時のフェラーリの習慣で1気筒あたりの排気量365ccに由来する。
GT4の「4」は4カムシャフト、つまりDOHCを意味し、BBは「ベルリネッタ・ボクサー」の略。
ベルリネッタはイタリア語でクーペ、ボクサーは水平対向エンジンを意味する。
最高出力380PSを発揮し、最高速度は302km/hとアナウンスされた。これは、カウンタックより2km/h速く、当時の世界最速。
ただし、カウンタック登場の半年後の数字であり、この2km/hの差はフェラーリの意地と考えられる。
あるオーナーが「メーターで280kn/hしか出ない」とフェラーリにクレームをつけたところ、「それだけ出ていれば100%だ」と
回答されたという。いくつかの雑誌でもテストが行われたが、実測で270km/h前後という結果になっている。

フェラーリのロードカーとして、水冷V型12気筒エンジンをミッドに搭載した初のモデルである。しかし、
12気筒エンジンを縦置きにした場合、室内スペースにかなり影響が出てしまうが、フェラーリにはホイールベースをできるだけ短くする
というポリシーがある。そこで、先代デイトナの水冷60度V型12気筒エンジンのバンク角を180度に拡大。
さらに、その下にトランスアクスルを配置するという、2階建てパワートレーン構造を採用。
これにより、縦置きのミッドシップながらも、パワートレーンの前後長が短くなり、広い室内スペースを確保することができた。
このレイアウトは、後のテスタロッサまで受け継がれることになる。しかし、BBは2階建てゆえの高重心と、
前後重量配分40:60というリアヘビーによる不利なハンドリング、排気効率の悪さによるパワーロスというマイナスも指摘されている。
オールアルミ製のエンジンは、「ティーポF102」と呼ばれる。ボアは81.0mm×71.0mmと変わらないものの、
デイトナまではカムシャフトの駆動にチェーンを使用していたが、BBはタイミングベルトを使用している。ファイナルは、3度変更された。
最初は最高速度重視のハイギヤードだったが、徐々に中低速重視の乗りやすいセッティングへと変更された。トランスミッションも
ポルシェタイプのシンクロを使用していたが、大パワーに対応するため、シャシーナンバー17543以降はボルグワーナータイプに換えられた。
ちなみに、BBは本当の意味では水平対向エンジンではない。水平対向エンジンは、一般的に向かい合った
バンクのピストンが中心線から左右対称に逆方向に動くことでバランスを取るようになっている。しかし、BBの場合、
向かい合ったバンクのピストンが同じ方向に動く。たんにエンジンのバンク角を開いたもので、正式には180度V型12気筒となる。
ミッションは5速MTで、クラッチはワイヤー式で240mmのシングルプレートを採用。
シャシーは軽量化と生産性向上のため、セミモノコックを採用。スチール製のコックピットセクションを3本の楕円断面鋼管で組み、
その前後を角断面鋼管によるサブフレームで構成されている。前後のカウルとドアは、応力を受けないアルミ製。
それ以外のホイールアーチ、キャビン、センタートンネル、コンソール、ダッシュボード、バルクヘッドなどは、FRPとなっている。
サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーンで、ブレーキは前後ともベンチレーテッド・ディスクを採用している。
ホイールは前後ともクロモドラ社の7.5J×15、タイヤは70扁平の15インチで、フロントは215/70VR15、リアが225/70VR15を履く。

インテリアはシンプルかつ機能的。メーター類は330km/hまでのスピードメーターとタコメーターが大きくレイアウトされ、
その間に水温計と油圧計、メーターナセルの左側に時計と油温、右側に水温とフューエルが配置されている。
シートは3タイプあり、前期型はプロトタイプと同じ形状デザインで、革ではなく、軽量なファブリックを使用。
前後にスライドできるが、バックレストの角度は調整できず、ヘッドレストもない。中期型は革が使われるとともに、
中央部の形状などがデイトナと同じタイプのものに変更された。さらに、後期型ではリクライニング機構が備わり、ヘッドレストも追加された。
ダッシュボードはこげ茶色のバックスキンレザーが使われていたが、シートが革になったのを受けて、こちらも革に変更された。
リアカウル内はエンジンのみ、フロントカウル内にわずかに荷物を積めるだけで、ラゲッジスペースはほとんどない。
その代わりに、シートの後に小型トランク程度を収納できるスペースが設けられている。
室内の前後の壁、フロアはFRP製が使用され、軽量化が図られている。

ボディはV12をミッドに搭載しながらも、355よりもひとまわり小さく、アルミとスチール製。
ヘッドライトは左右2灯ずつの4灯。リトラクタブル・ヘッドライトの手前に、ウインカーとポジションランプが内蔵されている。
カバーの色はホワイトとオレンジがあり、輸出先によって異なる。フロントカウル内には、スペアタイヤ、ブレーキマスター、
ブレーキフルード・タンク、バッテリーなどが収まり、わずかだがトランクスペースもある。
リアクォーター後方のスリットは、室内換気用。ルーフにはスポイラーが装備される。アルミ製のフロント/リヤのカウルは薄く変形しやすいため、
開閉は左右1名ずつで行ったほうが無難。エンジンルームへの吸気はリアカウル上部のスリットしかなく、
冷却効果を高めるため、後期型ではリヤカウル中央にスリットが追加された。
ワイパーはワンアームで、大小2本のブレードがセットになっている。給油口は左側のエンジンカウル部分にあり、ロック機構は持たない。
365BBの主な特徴はスポイラーのないフロント、リヤの3連式のテールランプ、3本出しのマフラーなど。
なお、テールランプはプロトタイプでは2連だったが、市販モデルは3連に修正された。

1971年には発表されたが、開発に約2年を要した。テスト1号車は6万km、2号車は4万kmを、それぞれ走行したという。
実際に生産が始まったのは、1973年後半になってから。これは、シャシー、エンジン、ギヤボックスなどの開発に時間がかかったのと、
「デイトナ」の販売が好調だったためである。実際のボディパネル製作は、他のフェラーリ同様、
スカリッティ社の職人がハンマーで叩き出して加工。バッカリー社製のフレームと組み合わされた。
1976年6月までに、387台が生産された。これは、BBシリーズの中で最も少ない。


スポイラーのないノーズ

ホワイトタイプのウインカーカバー

3連テールランプと3本マフラー

初期型のリヤカウル





512BB
アメリカの排ガス規制に対応するため、365GT4/BBに替わるモデルとして、1976年7月のパリ・サロンで登場。
BBの前につく数字は、5リットル12気筒を意味する「512」に変更された。ボアを1mm、ストロークを7mm拡大し、
排気量を4942ccにアップ。同時に潤滑方式はウェットサンプからドライサンプに変更された。圧縮比も9.2に高められ、
最高出力は380PSから340PSにダウンしたが、最大トルクは44kgmから46kgmにアップするなど、
エンジン特性がこれまでのショートストローク高回転型からロングストロークのトルク型に修正され、
マイルドで乗りやすくなり、最高速度も283km/hにダウンしてしまった。
クラッチがワイヤー式のシングルプレートから、油圧式の216mmのツインプレートに変更され軽くなったたほか、
ラジエターの容量もアップされ、電動ファンも2個から3個に増やされた。

エクステリアでは、ノーズにチンスポイラーが追加された。これは直進安定性を高めるためで、新たに完成したピニンファリーナの
風洞設備が大いに活躍したという。そのほか、サイドにブレーキ冷却用のNACAダクトが追加、
リアのテールランプが3灯からひとまわり大きいサイズの2灯に、マフラーも左右6本からより太くなった左右4本へ変更されるなど、
比較的簡単に365BBと見分けることができる。
これ以外の変更点としては、リアホイールを7.5インチから9インチに拡大し、
タイヤも215/70VR15から225/70VR15へとひとまわり太くなった。その影響で、リアカウルも全幅で30mm延長された。
さらに、リアカウルが後方に伸ばされ、バンパーも長くなり、全長が40mm延長された。
この拡大に伴って、ボディとリヤカウルの接合部の角度も修正された。また、排気量が拡大されたことによる
エンジンルーム内の熱対策のため、リヤカウルの冷却スリットが左右の外側にも増設された。
室内では、あまり変更がないが、センターコンソールにあるパワーウインドウのスイッチが、操作しやすいように手前に移動された。
巻き取り式のサンバイザーが、手前に降ろす一般的なタイプのパッド型に変更された。
1980年には、ステアリングがモモからナルディに変更されたほか、カタログ上のパワー表示が20PSダウンの340PSに修正された。
これは現実的な数字に修正したものといわれている。1976年から1981年に、929台が生産された。


ノーズに追加されたスポイラー

ブレーキ冷却用のNACAダクト

2連テールランプと2本マフラー

左右外側にも増設されたスリット





512BBi
1981年に登場した、BBの最終モデル。512BBからの大きな変更点は、
燃料供給装置がウェーバー製トリプルチョーク・キャブレターからボッシュ製Kジェトロニック・メカニカルインジェクションに変更されたこと。
パワー、トルクともキャブ仕様と変わらないものの、さらにマイルドで扱いやすくなり、最高速度もより現実的な283km/hに改められた。
タイヤは1981年からオプションだったミシュラン社製のTRXが標準になり、サイズは365BBと同じように前後共通の240/55VR415から、
ホイールがフロント180TR415、リア210TR415になり、乗り心地重視に変更された。
外観では、フロントのポジションランプが独立しグリルの上に内蔵されたこと、ウインカーがオレンジに統一されたこと、
グリル奥にあったランプが前面に出たこと。また、ラジエターの電動ファン送風方向が変更されたのに伴って、
グリルとノーズのチンスポイラーの間に5つのダクトが追加された。チンスポイラーの真ん中部分の穴は、牽引フック用の穴。
リアは、マフラーの横にフォグランプが追加された。エンジンのエアクリーナーの位置が変更されたことにより、
リヤカウルにある2個のカバーの間隔も狭くなっている。室内の基本的なレイアウトは変更はないが、
ルーフにマップランプ、リモコンミラーのスイッチがパワーウインドウ・スイッチのすぐ後に追加された。
純正オーディオは、油温計とアナログ時計の下のスペースに、フェラーリエンブレム入りのイコライザーが装備されているものもあった。
ステアリングは前期型がナルディだったが、83年の後期型からモモに戻された
ボディカラーは512BBまで下半分がブラックのツートーンだったが、512BBiはワンカラーが標準。
特徴的なツートーンはオプション扱いとなった。
1981年から1984年に、1007台が生産された。これはBBシリーズで最も多い。


独立したポジションランプと
グリル手前になったフォグ

スポイラー上に追加されたダクト


マフラー横に追加されたフォグ


間が狭くなったカウルのカバー



▲ケーニッヒ512BBi


■Specification (1973年〜1984年 生産台数:2323台)
365GT4/ BB 512BB 512BBi
発表年 1971 1976 1981
生産年 1973〜1976 1976〜1981 1981〜1984
生産台数 387 929 1007
シャシー 鋼管チューブラーフレーム
全長×全幅×全高(mm) 4360×1800×1120 4400×1830×1120
ホイールベース(mm) 2500
トレッド前後(mm) 1500/1500 1500/1563 1500/1500
車両総重量(kg) 1160 1500 1580
エンジン 水冷180度V型12気筒DOHC
ボア×ストローク(mm) 81.0×71.0 82.0×78.0
総排気量(cc) 4391 4972 4942
燃料供給 ウェーバー40IF3C×4 ボッシュKジェトロニック
圧縮比 8.8 9.2
最高出力(PS/rpm) 380/7700 360/6800 340/6000
最大トルク(kgm/rpm) 44.0/4400 46.0/4600 46.0/4200
エンジン搭載位置 ミッドシップ縦置き
駆動方式 後輪駆動
トランスミッション 5速MT
変速比 1速
      2速
      3速
      4速
      5速
最終減速比
2.642
1.888
1.428
1.080
0.821
3.750
3.248
2.083
1.587
1.200
0.913
3.214
0→400m(秒) 12.9 13.6 14.2
0→1000m(秒) 24 24.1
最高速度 302 283 283
ステアリング ラック&ピニオン
サスペンション 前後ダブルウィッシュボーン+コイル
ブレーキ 前後ベンチレーテッド・ディスク
ホイール 7.5J×15(F)、7.5J×15(R) 7.5J×15(F)、9.0J×15(R) 180TR415(F)、210TR415(R)
タイヤ 215/70VR15(F)、225/70VR15(R) 215/70VR15(F)、225/70VR15(R) 240/55VR415(F)、240/55VR415(R)
乗員定員(名) 2

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