Ferrari Dino


206GT
現在まで続く「スモール・フェラーリ」の元祖として、プロトタイプが1967年11月のトリノ・ショーで発表された。
その後、細部の仕様が変更されたプロトタイプが1968年1月のブリュッセル・ショーで公開。実際に生産が始まったのは
1968年になってからで、当時の価格で495万リラ。24歳で亡くなった創始者エンツォの息子「アルフレード」を哀悼し、
その愛称「ディノ」がつけられた。フェラーリ初の量産ミッドシップカーでありながら、フェラーリとは別のブランドとして区別されており、
単に「ディノ」と呼ばれる。そのため、フェラーリのエンブレムもつかない。エンブレムに使われている「Dino」の文字は
アルフレードの直筆。「206」は、過去の6気筒レーシング・モデル同様、排気量(2.0)と気筒数(6)を表す組み合わせになっている。

シャシーは、楕円鋼管からなる鋼管ラダーフレームを、2枚の鋼板でサンドイッチしてメインフロアを形成。
その前後に、サスペンションやエンジンを載せた鋼管フレームを接合する。美しい曲線のエクステリア・デザインは、
ピニンファリーナ社が担当。実際にデザインしたのは、フィオラバンティ。外板はアルミニウム製で、スカリエッティ社の工房で職人によって
ハンドメイドで仕上げられている。きわめて手が込んだ作りであり、かつてのフェラーリならではの工法といえる。
ボディサイズは、全長4150mm、全幅1700mm、全高1115mm、ホイールベースも2280mmしかなく、かなりコンパクト。
ボディ外皮に軽量なアルミニウムが使われていることもあり、車重もわずか900kgしかない。フロントのグリルから取り込んだエアは
ラジエーターを冷却し、ボンネットの3つのスリットから排出される。サイドのドア後方にあるインテークはエンジンの冷却用。
スペアタイヤはボンネット、エンジンはミッドに横置きされているため、その後方にトランクルームが備わる。

ミッドに横置きされたティーポ135Bと呼ばれるエンジンは、先にデビューしたフィアット・ディノの水冷V型6気筒DOHCをベースに
チューンされている。主要部分はフィアットで生産され、組み立てはフェラーリの工場で行われた。86.0mm×57.0mmの
ボア×ストロークから1986ccの排気量を得て、最高出力180PS/8000rpm、最大トルク19.0kgm/6500rpmを発揮。
わずか900kgのボディを、最高速度235km/hまで引っ張る。最高出力180PSを発揮する、水冷V型6気筒エンジンをミッドに横置き搭載。
2リットルなので、登録は5ナンバーとなる。サスペンションは、前後とも鋼板を組み合わせたAアームによるダブルウィッシュボーン。
コイルスプリングとテレスコピック・ダンパーはオーソドックスなアウトボード・マウント式となっている。
ホイールはセンターロック式のアロイ・ホイールで、クロモドラ製の軽量かつ頑丈なマグネシウム合金製で、
サイズは6.5J×14インチ。タイヤサイズは前後共通で、185VR14タイヤを履く。

インテリアは、同時期に生産されていたデイトナと共通部分が多く、シンプルな作りとなっている。メーターパネルには、
スピードメーターとタコメーターが大きく配置され、その間に油温計、水温計、油圧計、燃料計が収まる。
いちばん左端に時計、右端には電流計がレイアウトされる。ステアリングは大径のウッドタイプで、3本スポーク。
中央にはディノのロゴが配されたホーンボタンがつく。ダッシュボードは、グローブボックスのふたがメーターパネル以外をカバーする。
内部は、大小2つのコンパートメントにわかれていてる。フロアコンソールには、シフトの横にヒーターコントロール・レバーが2本備わる。
シフト手前には、灰皿、シガー・ライター、ラジオのスイッチがレイアウトされる。シートは12気筒モデルのデイトナに似たタイプが採用されている。
前後スライドのほか、前部をチルトアップすることも可能。ヘッドレストはシート本体ではなく、バルクヘッドに装着される。

この206GTは、1969年に246GTにバトンタッチするまでの1年半の間に150台が生産された。これは、ディノの中で最も少なく、
最初のモデルということもあってシリーズの中でいちばん人気が高い。ほかのモデルとの違いは、ボディサイズ。
206は全長4150×全幅1700×全高1115であるのに対し、246は全長4235×全幅1700×全高1135mm。ホイールベースも、
206は2280mmだが、2340mmと、206はひとまわりコンパクトになっている。これによりルーフからリアまでのラインに若干の違いがあるが、
よほどのマニアでない限りパッと見ではわかりづらい。比較的わかりやすいポイントとしては、センターロック式のホイール、
左クォーターピラーから飛び出しているフューエルリッド、サイドインテークのくぼみにあるドアのキーロック。
ほかには、前後の細いバンパー(プロテクター・ラバーも薄い)、リアのナンバープレート上にあるプッシュボタン式のトランク・オープナー、
エンジンカバーにある片側6本のルーバー(264GTは片側7本)。インテリアでは、ウッドのステアリング(246GTではレザー)、
メーターナセル以外をフルにカバーするグローブボックス、リア・バルクヘッドに取り付けられているヘッドレストなど。


ディノの直筆エンブレム


くわえ込み型の薄いバンパー


センター集中型のワイパー


センターロックホイール


くぼみの中にあるキーロック

飛び出しているフューエルリッド

エンジンカバーの6本のルーバー

バンパー下にあるバックランプ





246GT  L type
1969年6月、フェラーリはフィアットの傘下に入ることになるが、その少し前、3月のジュネーブ・ショーで246GT(Lタイプ)が発表された。
エンジンの排気量が拡大されたため、206から2.4リットル/6気筒を意味する246へ車名が変更された。
これは、生産性の向上と、ライバルであるポルシェ911に対抗するための排気量拡大が狙い。フィアットが望む、
それまでの2倍という年間生産台数(1968年の生産台数は729台)を実現するために、工場の設備や工法の変更のほか、
ボディパネルを担当するスカリエッティ社の準備もあり、生産が始まったのは1969年の後半になってから。当初、スカリエッティ社では
素材がアルミから鉄に変わっても、職人がハンマーで叩いて成形していたが、後に自動プレス機が導入され、生産性が向上した。

フィアットで生産されることになったエンジンは、充分な信頼性と排気量を拡大するために、ブロック素材が
それまでのアルミから鉄へと変更された。名称はティーポ135CSとなったが、フューエル・ラインの取り回しなど、
細部が異なる程度で見た目はほとんど同じ。ボア×ストロークは延長され、排気量は433ccアップの2419ccに拡大。
最高出力は15PSアップの195PS/7600rpm、最大トルクは3.8kgmアップの22.8kgm/5500rpmとなり、最高速度もに245lm/h向上した。

ボディは、燃料タンクと室内空間を拡大するため、206の全長4150×全幅1700×全高1115から、全長4235×全幅1700×全高1135mmに
ひと回り大きくなった。206GTはロードカーとしての居住性を考慮して設計されていたが、顧客殻のリクエストに応え、
スペースを拡大。ホイールベースが60mm延長され、2340mmとなった。これによって全長が4150mmから4235mmになったほか、
全高も20mm引き上げられ1135mmとなり、ヘッド・クリアランスに余裕が生まれた。
インテリアは、206からほとんど変更はない。

ボディは、燃料タンクと室内空間を拡大するため、ひと回り大きくなった。もともと206GTはロードカーとしての居住性を考慮して
設計されていたが、顧客殻のリクエストに応え、スペースを拡大。ホイールベースが60mm延長され、2340mmとなった。
これによって全長が4150mmから4235mmになったほか、全高も20mm引き上げられ1135mmとなり、
ヘッド・クリアランスに余裕が生まれた。なお、全幅はそのまま。インテリアは、206からほとんど変更はない。

このLタイプは、フィアットの量産化計画が功を奏し、1969年から1971年の間に357台が生産された。
ボディが拡大されたが、それ以外の識別点としては、左クォーターピラーのフューエルリッドがボディに内蔵され、
エンジンフードのスリットが6本から7本になったこと程度。エンジンがパワーアップされていることに加え、センターロックタイプのホイール、
ドアのキーロックの位置など、206のディテールが踏襲されているので、246の中でも人気が高いモデル。
なお、ディノが正式に輸入されたのは246になってから。206の頃は、まだ日本に正規ディーラーがなかった。
西欧自動車がディーラーとなったが、その後、西武自動車に変わり、さらに現在の
コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッドになった。1970年の販売価格は、900万円だった。


やや厚くなったバンパー

ボディ内蔵のフューエルリッド

エンジンカバーの7本のルーバー




246GT  M type
Mタイプは、フィアットによる工場の拡張が終わり、生産方法が新しくなってからのモデルである。
1971年から生産が始まったが、その年の終わりには最終型のEタイプが登場。Lタイプよりも生産期間は短いが、
生産性が向上したことにより、生産台数は506台とLタイプの357台を上回っている。イギリス向けの右ハンドル仕様車が登場したのも、
このMタイプから。特徴は、ホイールが5穴タイプに変更されたこと、それまでサイドのインテークのくぼみ部分にあったキーロックが、
インテークの下に移動していること、トランクのプッシュ・ボタンがなくなりスッキリしたこと、それまでは左右のバンパー下に各1個ずつあった
バックランプがリアのセンター下部にひとつだけ備わること。インテリアは基本的にLタイプから変わらないが、細部に修正が加えられている。
それまではシフト横にあったヒーターコントロール・レバーが、ダッシュボードに移動。それによって、ブローブボックスの
ふたの幅も短いものとなった。ステアリングホイールは、ひと回り小径の本皮製に変更された。シートはチルトアップ機構は省かれ、
前後スライドのみになった。ヘッドレストも、それまでのバルクヘッドから、シート本体に接合されるようになった。


5穴タイプのホイール

くぼみの下になったキーロック

プッシュボタンが廃止されたトランク

センターに1個のバックランプ





246GT  E type
1971年末には、シリーズ最多の生産台数となったタイプEへと進化。完全な量産タイプとして、ボディ・パネルはすべて
大型プレス機で製作されるようになり、以前のような個体差はなくなった。メカニズムは基本何も変わらないが、
それまでの1速:3.075、2速:2.117、3速:1.524、4速:1.250、5速:0.857から、1速:3.230、2速:2.203、3速:1.619、4速:1.200、5速:0.895に
ギアレシオが変更されている。外観は初期のモデルはMタイプから変更はないが、後期タイプではいくつか特徴がある。
フロントのバンパー短くなり、開口部まで回り込まない対応になったほか、1973年頃からセンターに停止していた
ワイパーが並行停止型に変更された。インテリアもMタイプを引き継いでいるが、リアのバルクヘッドにあった
チョーク・レバーがシフト・ゲート脇に移動している。また、ダッシュボードのエア・アウトレットが、
それまでの格子型からDINOの名前が刻み込まれたフラップ型に変更されている。生産性が向上するとともに、排ガス・安全対策を施した
北米仕様車も本格的に導入されるようになり、1971年から後継モデルの308GTBが登場する1974年までの間に、
2898台が生産された(246GTSを含む)。これは、ディノ・シリーズの中でダントツの数字である。


バンパーはくわえ込まないタイプ

平行停止型のワイパー

形状が異なる北米仕様ウインカー

北米仕様のリアランプ




246GTS

北米市場での販売台数の増加を狙い、1972年にジュネーブ・ショーで発表後、カタログモデルに追加された。
GTSのSは、スパイダーを意味する。GTをベースにタルガトップ仕様になっており、樹脂製のルーフパネルは
前方2ヵ所の穴にボスを差し込み、後ろ側2ヵ所で固定する。操作自体は簡単で、女性でもスムーズに着脱できるほか、
はずしたルーフはシート後方に収納できる。このタルガトップ化にともない剛性を確保するために、リア・クオーター・ウインドウが廃止され、
代わりに3本のスリットが追加された。それ以外はEタイプのままであり、インテリアも同様。1972年から生産終了の1974年までの間に、
1274台が市販された。これはディノ・シリーズ全体の1/3に当たる数字であり、そのほとんどが北米向けだった。


■Specification 
206GT 246GT L type 246GT M type 246GT/GTS E taype
発表年 1967 1969 1971 1971
生産年 1967〜1969 1969〜1971 1971〜1974 1971〜1974
生産台数 150 357 506 2898
シャシー マルチチューブラースペースフレーム
全長×全幅×全高(mm) 4150×1700×1115 4240×1700×1135
ホールベース(mm) 2280 2340
トレッド前後(mm) 1425/1400 1425/1430
車両総重量(kg) 900 1080
エンジン 水冷65度V型6気筒DOHC 水冷60度V型6気筒DOHC
ボア×ストローク(mm) 86.0×57.0 92.5×60.0
総排気量(cc) 1987 2418
燃料供給 ウェーバー40DCNF1×3 ウェーバー40DCNF7×3
圧縮比 9.1 9.0
最高出力(PS/rpm) 180/8000 195/7600
最大トルク(kgm/rpm) 17.85/5600 23.0/5500
エンジン搭載位置 ミッドシップ横置き
駆動方式 後輪駆動
トランスミッション 5速MT
変速比 1速
      2速
      3速
      4速
      5速
最終減速比
3.075
2.117
1.524
1.250
0.857
2.667
3.075
2.117
1.524
1.250
0.857
3.625
3.230
2.203
1.619
1.200
0.895
4.062
0→100km/h(秒) 8.0 - - -
0→1000m(秒) 27.0 - - -
最高速度(km/h) 235 245
ステアリング ラック&ピニオン
サスペンション 前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ 前後ベンチレーテッド・ディスク
ホイール 6.5J×14(F/R)
タイヤ 185VR14(F/R) 205/70VR14(F/R)
乗員定員(名) 2


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