Ferrari F50

開発コードF130ことF50は、フェラーリ創立50周年記念モデルとして、1995年3月のジュネーブショーで発表された。
正確な50周年は1997年なので、2年ほど早いが、最後の1台は1997年にデリバリーされた。
名前はF40に準ずるが、中身はまったくの別物。F40は288GTO/288GTOエボルツィオーネを発展させたモデルなのに対し、
このF50はすべてが新設計である。フェラーリ伝統の鋼管スペースフレームではなく、F1マシンと同じカーボン製の
センターモノコックタブを採用。ハニカム材の両面をカーボンファイバースキンでサンドイッチした素材によって、
フロントサスペンションボックスからコックピット背後のバルクヘッドまでを一体成形してある。エンジンは、前面に軽合金製の
マウンティングプレートを留め、モノコック背面にボルトで連結される。結合部は、キャビン段差部にある上部の4ヵ所と、
下部の1ヵ所の、合計5ヵ所。エンジン後部にトランスアクスルを結合し、リアサスペンションもこの部分にピボットされる。
車両の動きによって生じる応力や車重そのもの、サスペンション、タイヤが生み出す上下前後方向の力は、
すべてエンジンとトランスアクスルが負担する。また、ホイールの位置決めを正確にするため、サスペンションアームの支持点は
リジットマウントされるが、乗り心地よりも正確なアライメントが重視されている。なお、モノコックの開発と製作は、
F1マシン同様、ザイテック・エアロスペース社で、単体での重量はわずか102kg。この車体構造により、
前後の重量配分は42:58とミッドシップのロードカーとしては理想的な数値となっている。

エンジンは、F40は水冷V型8気筒DOHC+ツインターボだったが、F50ではノンターボの水冷V型12気筒DOHCを選択。
これは、1990年のF1マシン641/2の3.5リットルエンジンをベースに開発したもの。1気筒当たり5バルブの
放射状配列がF50専用に設計し直されている、バルブリターンの動力がF1の空気圧からスプリングに変更されている、
シリンダー間の肉厚を大きくして耐久性に考慮している、排気量をF1の3.5リットルから4.7リットルに拡大するなど、
信頼性を確保するためにいくつか変更を受けた。そのほか、シリンダーブロックはノジュラー鋳鉄製、
コンロッドはチタン合金の成形、ピストンはアルミ合金の鍛造となっている。4本のカムシャフトは、ベルトではなく、
金属製のチェーンで駆動。ボッシュのモトロニックM2.7で制御され、最高出力520PS/8500rpm、最大トルク48.0kgm/6500rpm、
最高速度325km/hというスペックを誇る。フィオラノのテストコースでは、F40よりも3秒以上速いラップを刻んだという。
ミッションは6速MTで、ダブルコーンのシンクロメッシュ機構が採用されている。ギヤボックスは、
エンジンの背後に組み合わされている。サスペンションは前後ともにダブルウィッシュボーンで、プッシュロッド式のリアは
エンジンに直接接合されている。ビルシュタイン製の減衰力可変型ダンパーとスプリングは、F1マシン同様、
水平方向にマウント。ロアアームは、ダウンフォース獲得のために、高めに位置されている。フロントサスペンションには
リフティングシステムが装備されている。ダッシュボード左にある3つのスイッチのいちばん右がそれで、オンにすると
約5秒で50mm浮き上がる。スイッチを再度押すか、30km/hを超えれば自動的にもとの車高に戻る。
ブレーキは、前後ともベンチレーテッド・ディスクで、ブレンボ製の4ポットアルミキャリパーを備える。
ABSやASRは装備されておらず、またサーボもないため、かなりの踏力が必要である。ホイールはスピードライン製の
鍛造マグネシウムでフロントが8.5J×18、リアが13J×18。タイヤはF50専用に開発されたグッドイヤー製の
「イーグルF1フィオラノ」で、フロントが235/35ZR18、リヤが335/30ZR18を履く。

エクステリア・デザインはピンファリーナによるもので、F40発表後の1980年代終盤から研究がスタート。
1990年頃には、スケールモデルが複数製作され、2000時間におよぶ風洞実験が行われた。
この結果、ルーフを付けた状態でのCd値は0.336で、300km/h走行時のダウンフォースは前軸上180kgm、後軸上270kgmと
なっている。これはフラットなアンダーカウルによるもので、160km/hを超えると、ヴェンチュリー効果を発揮する。
F1マシンをモチーフにしたボディは純粋にカウルであり、走行中のストレスは受けない。そのため、軽量な素材が使われ、
カーボンケブラーとノーメックスハニカム素材によって成形されている。ノーズは中央部が湾曲しており、
アンダーカウルへとエアを高速で流入。ベンチュリー効果を生み出し、リアのディフューザーから排出される。
ラジエーターはフロントノーズに配置されており、取り入れられたエアはボンネットのダクトから排気される。
空力と軽量化のため、ヘッドライトはリトラクタブルではなく、固定式でクリアカバーに覆われている。フロントのカウル内には、
バッテリーなどが配置されている。フューエルリッドは、アルミ製で、左リアフェンダー上にある。ハードップを外せば、
オープンとしても楽しめるが、その作業はかなり複雑だという。なお、ソフトトップを装着することもできる。
リアカウル内のエアインテークにもカーボンが使われている。リアタイアは、F40では剥き出しだったが、
補器類に小石などがあたらないようにカバーが付けられている。エンジン部分のカバーはクリアタイプで、
放熱のためメッシュ仕様で、リアグリルとともに、カウル内のパワーユニットを垣間見ることができる。
サイズは、F40の全長4430mm×全幅1980mm×全高1130mmに対し、全長4480mm×全幅1986mm×全高1120mm。
ホイールベースは、F40は2450mmだが、F50は2580mmとなっている。

インテリアは、かなりスパルタンになっている。ダッシュボードやドアトリム、サイドシル、フロアパネルなど、
インテリアは軽量化のためにカーボンが多用され、そのまま剥き出しになっている。メーターパネルは自発光式で、
10000rpmまで刻まれたタコメーター、360km/hまでのスピードメーターはアナログ、その左に、燃料計、油圧計、
シフトポジションを表示するインジケーターなどが配置されている。エンジンは、イグニッションキーとスターターボタンで始動。
ウインカーは電子音になっている。シートはバケットタイプを採用。骨格はカーボンファイバー製で、コノリー製の
レザーと通気性素材で覆われている。サイズはスタンダードとラージの2種類があり、前後とバックレストの
角度も調整できる。カーボンファイバー製のシフトノブは、シャフトまでカーボンが使用されている。シフトゲート後方には、
標準装備のエアコンのスイッチが配されている。バックミラーはルーフが外れるため、フロントウインドウに設置されており、
形状も視認性を考慮した楕円タイプ。各ペダルは、ドライバーによって調整ができるように
設定されている。エアコンは標準装備となっているが、オーディオなどの快適装備は一切省かれている。

最終的に1311台が生産されることになったF40とは違い、公約どおり349台の限定が守られた。
この349台という数字は、「市場で望まれる数字から1台引いたものが、フェラーリの限定車には適切な数字だ」という、
創始者エンツォの意志を受けたもの。ボディカラーはF40はロッソ・コルサ(レッド)のみだったが、F50はロッソ・コルサに加え、
ダークレッド、イエロー、ブラック、シルバーが設定された。輸入ディーラーのコーンズが発表した、当時の価格は5000万円。
日本仕様は、ヨーロッパ仕様のエクステリアに、アメリカ仕様のエンジン/ミッションの組み合わせになっている。






特徴的なフロントノーズ


巨大なラジエーター


ロールバー


専用デザインのホイール


左側にあるフューエルリッド

リアブレーキ用のエアスクープ

クリアなエンジンカバー

左右4本出しのマフラー

▲F50GT
■Specification
発表年 1995
生産年 1995〜1997
生産台数 349
シャシー カーボンファイバー製センターモノコック
全長×全幅×全高(mm) 4480×1986×1120
ホールベース(mm) 2580
トレッド前後(mm) 1620/1602
車両総重量(kg) 1230
エンジン 水冷65度V型12気筒DOHC60バルブ
ボア×ストローク(mm) 85.0×69.0
総排気量(cc) 4698
燃料供給 ボッシュ・モトロニック2.7
圧縮比 11.3
最高出力(PS/rpm) 520/8500
最大トルク(kgm/rpm) 48.0/6500
エンジン搭載位置 ミッドシップ縦置き
駆動方式 後輪駆動
トランスミッション 6速MT
0→100km/h(秒) 3.87
0→1000m(秒) 21.7
最高速度(km/h) 325
ステアリング ラック&ピニオン
サスペンション 前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ 前後ベンチレーテッド・ディスク
ホイール 8.5J×18(F)、13J×18(R)
タイヤ 245/35ZR18(F)、335/30ZR18(R)
乗員定員(名) 2

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