Ferrari Testarrosa
BBシリーズに代わるフラッグシップモデルとして、1984年秋のパリ・サロンで登場。
ボディサイドのフィンとそこからリヤへと続くワイドなフェンダーのラインは、印象的で多くの人を魅了した。
「テスタロッサ」とは、イタリア語で「赤い頭」という意味。これは、1950年代から1960年代はじめにかけて活躍した
フェラーリ250テスタロッサの12気筒エンジンのヘッドが赤く塗装されていたことに由来する。

シャシーは、フェラーリ伝統の鋼管スペースフレームを採用。剛性確保と軽量化のために、角型断面の
クロームモリブデン製チューブが組み合わされる。パワーユニットと前後サスペンションは、サブフレームにマウントされ、
メインフレームに16本のボルトで接合されている。整備時にはパワーユニットをサブフレームごと着脱できるが、
マイナーチェンジした512TR/512Mではこの構造は採用されていない。ボディパネルはアルミがメインだが、安全基準の問題から
ルーフとドアはスチール、前後のバンパーはFRP製。ボディサイズは、全長4485mm×全幅1976mm×全高1130mmと、
512BBiよりも全長で85mm、全幅で145mm、全高で10mm拡大されている。ホイールベースも50mm延長され、2550mmに。
しかし、ボディがひとまわり大きくなっているにもかかわらず、車重は512BBiより74kg軽い、1506kgとなっている。

エクステリア・デザインは、ピニンファリーナ社が担当。ダイナミックで個性的であるだけではなく、風洞実験が繰り返し
行われるとともにCADを駆使し、Cd値は0.36を実現している。フロントのセンターにあるグリルはブレーキ冷却用で、
エアは左右に分かれるように湾曲している。その隣には、ウインカーとドライビングライトが一体化され、
その下にはブラックのチンスポイラーが備わる。左側のみにあるダクトは、エアコンのコンデンサー用。ヘッドライトは、
リトラクタブルで丸目4灯式。BBではフロントにあったラジエーターは、ボディサイドへ移動された。
ドアからはじまる特徴的なサイドのインテークは、そのラジエーターを冷却するためのもの。5本のバーの奥には整流版が
装備されており、取り入れるエアの量やその速度を調整している。フロントのトレッドはBBと同じ1520mmだが、
リアのトレッドはBBよりも85mm広い1650mm。これにより、迫力あるスタイリングだけでなく、直進性とコーナリング性能が向上した。

F113A型と呼ばれる水冷180度V型12気筒DOHC48バルブエンジンを、ミッドに縦置き搭載。これは、512BBiのF110A型を
ベースにしており、排気量は4942ccのまま、ボア×ストロークも82mm×78mmで変更はない。しかし、
ヘッドをDOHC4バルブ化するとともに、燃料供給にボッシュ社のKジェトロニックを採用。512BBiとは異なり、左右バンク独立型であり、
点火を制御するマリエッティ・マレリ社のマイクロプレックスも左右の制御が独立化されている。これにより、キャタライザーを装着しない
ヨーロッパ仕様で、最高出力390PS/6300rpm、最大トルク50.0kgm/4500rpmを発揮.し、最高速度は290km/hを誇る。
キャタライザーを装着する日本仕様の場合、最高出力は380PS/6300rpm、最大トルクは50.0kgm/4500rpmとなっている。
ミッションは5速MTで、512BBiと同じ。油圧式で、ツインディスク、ツインプレートを持つクラッチは、1インチ拡大され、
9インチに強化されている。トランスミッションがエンジンの下にある、2階建て構造はBBからそのまま受け継がれている。
サスペンションは、前後ダブルウィッシュボーンを採用。リアのダンパーはデュアル化されている。ブレーキは前後ともATE社の
ベンチレーテッド・ディスクで、当時ABSはまだ一般的ではなく、装備されていない。ホイールは16インチで、
フロントが8J×16、リアが10J×16を採用。初期型/中期型はセンターロックだが、後期型は5穴に変更された。
タイヤはフロントが225/50VR16、リアが255/50VR18で、初期型/中期型はヨーロッパ仕様がミシュランTRX、
北米仕様はグッドイヤー・イーグルが標準装着されていたが、後期型ではグッドイヤー・イーグルに統一された。

インテリアは、フェラーリの伝統に則った機能的かつスポーティに仕上げられている。メーターナセルには、
大径の320km/hまでのスピードメーターと、6800rpmからレッドゾーンとなるタコメーターの間に、油圧計、水温計が配置される。
センターコンソールには、燃料計、デジタル式の時計、オドメーター、トリップメーター、シフトゲート、その手前にドアミラー調整、ハザード、
パーキング、風量/温度調整、シガーソケット、パワーウインドウなどの各種スイッチが配置されている。3本スポークのステアリングは
ラック&ピニオン式だが、パワーアシスは装備されていない。シートは、シンプルな形状で、ヘッドレストには跳ね馬のアクセントが
施されている。エアコンは標準装備されている。ボディが拡大されたことにより、横方向に余裕が生まれ、タイト感は少ない。
ホイールベースもBBより50mm延長されており、シート後方にかなり有効なラゲッジスペースが設けられた。

テスタロッサは、1984年から1991年まで生産され、1992年に512TR、1994年にF512Mへと発展した。
約7年の間に7177台が生産されており、前期型、中期型、後期型に大別される。
前期型は1984年から1986年モデルで、ドアミラーが運転席側のAピラーの中央部に取り付けられ、ホイールはセンターロックタイプ。
中期型は1987年モデルで、ホイールはセンターロックのままだが、ドアミラーがサイドウインドウの三角窓部分に変更され、
左右に付くようになった。メカニズムも変更を受け、アイドリングの安定と燃費向上を狙ってエンジンマネジメントシステムが、
ボッシュ社のKジェトロニックからKEジェトロニックに変更された。スペックの変更はないが、これにともなって
エンジン型式もF113Bになった。また、オルタネーターの駆動用ベルトのサイズが変更され、新型プーリーも採用された。
1988年モデル以降の後期型は、ホイールがセンターロックから5穴タイプに変更された。さらに、前後サスペンションのアッパーアームと
ロアアームの形状が変更され、剛性がアップ。ダンパーのセッティングは、ややマイルドな方向に修正されている。
前期型・中期型で輸出先によりキャタライザーが装着・未装着だったが、後期型では全車に装着されるようになった。
なお、初期型と中期型では、タイヤとホイールが輸出先によって異なっている。ヨーロッパ仕様はミシュラン社のTRXタイヤを履くために、
ホイールはミリ規格を採用。サイズは、フロント210TR415、リア240TR415で、タイヤはフロントが240/40VR415、
リアが280/45VR415となっている。日本/北米仕様では通常のインチ規格になっており、ホイールはフロントが8J×16、リアが10J×16。
タイヤはグッドイヤー社のイーグルで、サイズはフロントが225/50ZR16、リアが255/50ZR16を履く。





二分割のバンパーとスポイラー


特徴あるサイドのインテーク


エンジンフード


リアのエンブレム


前期型のドアミラー

中期/後期型のドアミラー

初期型のセンターロックホイール

中期/後期型の5穴ホイール
■Specification
ヨーロッパ仕様 日本仕様
発表年 1984
生産年 1984〜1991
生産台数 7177
シャシー 鋼管スペースフレーム
全長×全幅×全高(mm) 4485×1976×1130
ホールベース(mm) 2550
トレッド前後(mm) 1518/1660
車両総重量(kg) 1506
エンジン 水冷180度V型12気筒DOHC48バルブ
ボア×ストローク(mm) 82.0×78.0
総排気量(cc) 4942
燃料供給 前期型/中期型:Kジェトロニック 後期型:KEジェトロニック
圧縮比 9.2
最高出力(PS/rpm) 390/6300 380/6300
最大トルク(kgm/rpm) 50.0/4500 50.0/4500
エンジン搭載位置 ミッドシップ縦置き
駆動方式 後輪駆動
トランスミッション 5速MT
変速比 1速
      2速
      3速
      4速
      5速
最終減速比
3.139
2.014
1.526
1.167
0.847
3.214
0→100km/h(秒) 5.7
0→400m(秒) 13.6
0→1000m(秒) 24.1
最高速度(km/h) 290
ステアリング ラック&ピニオン
サスペンション 前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ 前後ベンチレーテッド・ディスク
ホイール 前期・中期型:210TR415(F)、240TR415(R) 
後期型:8J×16(F)、10J×16(R)
8J×16(F)、10J×16(R)
タイヤ 前期・中期型:240/40VR415(F)、280/45VR415(R)
後期型:225/50VR16(F)、255/50VR16(R)
225/50VR16(F)、255/50VR16(R)
乗員定員(名) 2

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