Lamborghini Miura
Miura P400
ミウラは「スペインで最高の闘牛」のこと。P400のPはイタリア語で「POSTERIOR=後方の」の頭文字、400は排気量を意味する。
設計は、ジャン・パオロ・ダラーラ。当時レースで活躍していたフォードGT40を手本に、
横置きエンジンにミッションとデフを内蔵するミニのエンジンレイアウトを取り入れて開発がスタートした。
1965年11月のトリノ・ショーで、鋼板を溶接で組み上げたセミモノコックのシャシーのみのランニング・プロトタイプを展示。
350PSのパワーを発揮する水冷60度V型12気筒DOHCエンジンをミッドに横置き搭載し、その後ろにギアボックスとデフを配置する
独創的なレイアウト、レーシングカー並みのダブルウィッシュボーン・サスペンションという構造で、大センセーションを巻き起こした。
ボディはそれまでランボルギーニを担当していたツーリングでデザインする予定だったが、経済的な問題からベルトーネに変更。
そして1966年のジュネーブ・ショーで、マルチェロ・ガンディーニがデザインしたオレンジ色のボディを纏い、「ミウラ」という名前で発表された。
フレームとセンター・モノコック、ドアはスチール、大きく開く前後のカウルはアルミ軽合金で作られている。
ランニング・プロトタイプでは2460mmだったホイールベースが、生産型では2504mmに延長されたほか、
シャシー剛性向上のため、プロトタイプでは0.8mmだったモノコック部のスチールパネルの厚さが、生産モデルでは0.9mmに変更された。
その後も生産126台目、シャシーナンバー3312以降では1.0mmに変更、生産200台目からはシャシー前部も強化された。
フロントセクションに水平に寝かされていたラジエーターは、冷却効果とスペア・タイヤのスペースを確保するため、立てて置かれることになった。
また、エンジン・ルーム内の熱対策のため、リア・ウインドウがプレクシグラスからブラインドに変更され、ルーフ後端にもルーバーを追加。
ルーフが10mm高くなったが、シートが10mm低くなったので、ヘッドクリアランスは20mm広くなった。
横置きミッドシップというレイアウトを実現させるため、シリンダー・ブロック、クランク・ケース、
トランスミッション、デフをアルミ合金製のハウジングにすべて収容。ミニ同様、潤滑は同一のオイルで行う。
シリンダーヘッドはアルミ軽合金製で、バルブ狭角は70度。各バンクに2本ずつのカムシャフトを配するDOHCで、
ボア×ストロークは82.0mm×62.0mm。4基のウェーバー40IDL3Cにより、最高出力350PS、最大トルク37.5kgmを発揮する。
サスペンションは、前後ともダブル・ウィッシュボーン+コイル・スプリングで、スタビライザーはフロントが19、リアが16。
ブレーキは、前後とも12インチ径のガーリング製のソリッド・ディスクを採用。
ホイールは、ブレーキの冷却効果を上げるため、ボラーニのワイヤー・タイプからカンパニョーロのアロイ・タイプに変更された。
大きく反ったセンターロックのスピンナーは、国によっては保安基準に合格しないため、装着してないものもある。
タイヤは前後とも210/HR15。これは、当時はタイヤサイズが前後同一でなくてはならなかったため。
マフラーは、実際に見える部分はダミーに近い。カウルが大きく開くために、干渉しないよう途中で一度途切れている。
ヘッドライトはリトラクタブルだが、起き上がるタイプ。表面はカバーで、奥に丸型のライトが収まる。このカバーはカットの違いで、
3タイプある。フロントカウル内には、スペア・タイヤ、バッテリー、2基の電動ファンが収まる。燃料タンクはスペアタイヤの下に配置され、
給油口はフロント・カウルのスリットを開けると現れる。リヤセクションにはエンジンのほか、トランクも用意されている。
サイドウインドウ後方にエンジンルーム内へのエアインテークが設けられ、いちばん下の部分にドアオープナーが隠されている。
ステアリングは、3本スポークの革巻きで、ランボルギーニ自社製のラック&ピニオン。
インストルメント・パネル中央には、スピードメーターとタコメーターが大きくレイアウトされ、水温、油圧、油音、燃料、電流、時計の
6つのメーターはセンターコンソール上部にまとめられている。イグニッションはシフトゲートの隣にある。
シートは、バケット・タイプで前後にスライド可能。ヘッドレストはシート本体とは別に、背後の壁に固定されている。
シフト・レバーの横にある助手席用のアシスト・グリップは、初期のモデルには付かない。
1968年のブリュッセル・ショーでコンセプトカーのミウラ・ロ−ドスターが発表された。
ミウラの生産は、ベルトーネの工場でボディ製作、塗装、インテリアの組み付けが行われた後、
船でサンタガータにあるランボルギーニ社に送られ、エンジンやサスペンションなどを組み込むという行程で行われた。
1966年から1968年までに、475台(ロードスターを含む)が生産された。ミウラの総生産台数は765台なので
シリーズ最多だが、かなりの台数がP400S、P400SV仕様に変更されている。
まつ毛のあるヘッドライト |
フォグランプとウインカー |
フロントカウル内 |
スリットの下にある給油口 |
いちばん下がドアオープナー |
固定式ヘッドレスト |
エアファンネル仕様車も多い |
分断されているマフラー |
Miura P400S
フェラーリ・デイトナをはじめとするライバルの登場と北米の規制に対応するため1969年のトリノ・ショーでパワーアップしたP400Sが登場した。
Sは、イタリア語で「SPINTO(スピント)=並はずれた」の頭文字。エンジンの圧縮比を高め、インテーク・マニフォールドの径を拡大することにより、
最高出力は20PSアップした370PS、最大トルクも39.5khmに向上。カタログには、最高速度285km/hと記載されている。
サスペンションはアンチスクオット・ジオメトリー化が計られ、アシストリンクが追加された。タイヤは同じピレリだが、より高性能なタイプに換わった。
インテリアは、航空機を思わせるオーバーヘッドコンソール、パワーウインドウが標準装備となったほか、インパネのデザインが変更。
エアコンもオプション設定になった。シートは中央がクロス張りとなり、それまでの黒一色から2トーンになった。1970年にブレーキが
ソリッド・ディスクからベンチレーテッド・ディスクに変更されたのに続き、ドライブ・シャフトのジョイントやサスペンション・アームも強化された。
P400との識別点は、ヘッドライトの縁とウインドウフレームがシルバーに変更されていること。また、リヤのエンブレムにSが追加されている。
1969年から1971年までに140台が生産された。ミウラの中で最も少ないが、P400をP400S仕様にしているクルマが数多く存在する。
Sはライトまわりがシルバー |
ウインドウまわりも同様 |
Sが追加されたエンブレム |
Miura P400SV
1971年のジュネーブ・ショーに登場した、ミウラの完成型。Vはイタリア語で「VELOCE(ヴェローチェ)=速い」の頭文字。
P400Sからの大きな変更点は、リア・サスペンション。イオタからのフィードバックにより、ロアアームの形状がそれまでのAアームから
平行四辺形のアームとなり、前後のサブフレーム形状も強化されている。エンジンは排気量こそ変わらないものの、
圧縮比が高められ、インレット・ポートの改良、バルブ径の拡大、バルブ・タイミングの変更などにより、最高出力は385PSにパワーアップ。
最高速度は、290km/hと発表された。このパワーを受け止めるため、リアタイヤがより幅の広いものに変更され、
リアフェンダーも広げられた。1971年10月に生産されたシャシーナンバー4960以降から、
エンジンとミッションのオイルが分離され、ZF製リミテッド・スリット・デフもオプション装着が可能となった。
P400/P400Sとの認識点は、ヘッドライトのまつ毛がなくなったこと、フロントのウインカー/テールランプのデザイン変更、
サスペンションの強化によりマッチョになったリアフェンダーなど。
P400SVは150台が生産され、最後はシャシー・ナンバー5113のシルバーだった。
日本には100台以上のミウラが存在するはずだが、残念ながらそのほとんどはガレージで眠ったままである。
SVはまつ毛がない |
ポジションランプとウインカー |
張り出したリヤタイヤ |
新デザインのテールランプ |
Miura P400 | Miura P400S | Miura P400SV | |
発表年 | 1966 | 1968 | 1971 |
生産年 | 1966〜1968 | 1969〜1971 | 1971〜1973 |
生産台数 | 475 | 140 | 150 |
シャシー | 鋼板立体溶接 | ||
全長×全幅×全高(mm) | 4360×1760×1055 | 4380×1760×1100 | 4380×1780×1100 |
ホイールベース(mm) | 2500 | 2504 | |
トレッド前後(mm) | 1412/1412 | 1412/1541 | |
車両総重量(kg) | 980 | 1040 | 1305(エアコンなし1245) |
エンジン | 水冷60度V型12気筒DOHC24バルブ | ||
ボア×ストローク(mm) | 82.0×62.0 | ||
総排気量(cc) | 3929 | ||
燃料供給 | ウェーバー40IDL3C×4 | ||
圧縮比 | 9.5 | 10.5 | 10.7 |
最高出力(PS/rpm) | 350/7700 | 370/7700 | 385/7850 |
最大トルク(kgm/rpm) | 37.5/5100 | 39.0/5500 | 40.7/5750 |
エンジン搭載位置 | ミッドシップ横置き | ||
駆動方式 | 後輪駆動 | ||
トランスミッション | 5速MT | ||
変速比 1速 2速 3速 4速 5速 最終減速比 |
2.52 1.73 1.22 1.00 0.81 4.65 |
||
最高速度(km/h) | 280 | 285 | 290 |
ステアリング | ラック&ピニオン | ||
サスペンション | 前後ダブル・ウィッシュボーン+コイル | ||
ブレーキ | 前後ソリッド・ディスク | 前後ベンチレーテッド・ディスク | |
ホイール | 7.0J×15(F/R) | 7.0J×15(F)、9.0J×15(R) | |
タイヤ | 210/HR15(F/R) | 205/70VR15(F/R) | |
乗員定員(名) | 2 |
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