Porsche 930Turbo
ターボエンジンを搭載した917によるノウハウを活かし、ポルシェ初の市販ターボモデルとして
BMW2002ターボと同じ1973年9月のフランクフルト・ショーでプロトタイプが公開された。
ボディは幅広のピレリP7を収めるために
フロント/リヤのフェンダーが張り出し、リヤフェンダーには跳ね石防止のプロテクターを装着。
リアのエンジンフードには、巨大なウイングが突き出している。ボディカラーはシルバーで、グリーンのタータンチェック張りの
バケットシート、スライディングルーフも装備されており、最高出力280PS、最高速度280km/hと発表された。
このプロトタイプは、同じ年に開催された東京モーターショーに空輸されて、ポルシェのブースに飾られた。
翌1974年10月のパリ・サロンでは、ボディをグリーンに塗られた量産型が公開された。
エンジンは、930/50と呼ばれ、カレラRS3.0の空冷水平対向6気筒SOHCにKKK製のK26タービンをドッキングしたもの。
最高出力260PS(日本仕様は245PS)を発揮し、0→100km/加速5.2秒、0→1000m加速24.0秒、最高速度250km/h以上と発表された。
ミッションは、4速MTのみ。「4速のほうが機能的」とポルシェでは説明していたが、実際にはターボの強力なトルクに耐えられる
5速ミッションがなかったため。1976年モデルとして、1975年8月から量産が開始された。
エンジンのスペックには変更ないが、車重が55kg増え1195kgになった。また、0→1000m加速24.0秒、
最高速度250km/hのまま変更はないが、0→100km/加速が5.5秒に修正された。フェラーリやランボルギーニなどの
イタリアン・スーパーカーと比較すると、250km/hという最高速度はあまりたいした数字ではないが、
カタログ上での希望数値ではなく、実際に出すことのできる数値であり、信憑性の高いものだった。
初期モデルにはブースト計がなく、ブースト圧を知る方法はなかった。1977年モデルになってから、タコメーター内にブースト計が追加された。
エンジンのタービンは、エンジンルームの左下側、マフラーのタイコ左側に装着されており、インタークーラーもないため、
エンジンはインテーク形状と11枚羽のファン以外NAとあまり変わらない(NAのファンは5枚羽)。しかし、NAの場合は
クランクケースがマグネシウム合金だが、ターボでは重量は増加するが強度の高いアルミ合金製になっている。
エクステリアで目を引くのが、幅広のピレリP7を履くために大きく張り出した前後のオーバーフェンダー。
リアフェンダーには、飛び石防止のためにプロテクターが付いている。なお、開発段階で幅の狭いカレラ・ボディでもテストを実施。
最高速度は10km/h高く、ハンドリングも安定していたが、レースでのレギュレーションを考慮し、あえてワイドボディが選択された。
インテリアは、ノーマルの930とほぼ同じだが、スピードメーターのスケールが300km/hになっているほか、
パワーウインドウ、カセット・ステレオ、熱線入りのリアウインドウなどが標準で装備されている。
1978年モデルでは、ボアを2mm広げて3.3リットルに拡大。タービンもK27に変更となり、空冷式のインタークーラーも追加され
最高出力は300PSにアップしたが、車重も1300kgに増加したので性能的にはあまり変化がない。
ちなみに、日本仕様/US仕様は排ガス規制のため、268PSに抑えられ、最高速度は250km/h、0→100km/加速5.4秒。
外観はインタークーラーの採用により、リアウイングの形状がサイドの立ったトレータイプになったほか、リアタイヤが
15インチから16インチに変更された。日本仕様は、1981年から輸入が中止されたが、1983年半ばから再開。
1985年に、カブリオレに使われていた剛性パーツを採用。フロアパンやバルクヘッドなどが強化され、走行性もさらに安定した。
1987年にリトラクタブルヘッドライトのフラットノーズ仕様が限定で生産され、日本にも数台が上陸。
1988年には電動式ソフトトップのカブリオレとタルガが追加された。
ミッションはデビュー以来ずっとゲトラグ社製の4速MTのままだったが、最終の1989年モデルでは、
ボルグワーナー社製の5速MTになった。それまでの4速MTと比べると、1〜4速はローギヤードになり、5速はそれまでの
4速よりもハイギヤードになっている。あわせて、油圧クラッチの採用、サスペンションの設定変更なども行われた。
カタログの上の名称は、1978年までがターボ、1979年からが930ターボ、1980年からは911ターボへと代わった。
1974年から1989年までの15年間に、2万640台が生産されたが、初期の3.0リットルモデルは見かけることはまれ。
当時の日本のディーラーはミツワ自動車で、NAの930は595万円だったのに対し、930ターボは1395万円と倍以上の価格だった。
▲3.0リットル
▲カブリオレ
▲フラットノーズ
ビッグバンパー |
飛び石防止のプロテクター |
トレータイプのリアウイング |
片側2本出しのマフラー |
3.0リットルモデル | 3.3リットル | |
発表年 | 1974 | 1978 |
生産年 | 1975〜1977 | 1978〜1989 |
生産台数 | 20640 | |
シャシー | モノコック | |
全長×全幅×全高(mm) | 4291×1775×1320 | |
ホールベース(mm) | 2272 | |
トレッド前後(mm) | 1438/1511 | |
車両総重量(kg) | 1195 | |
エンジン | 空冷水平対向6気筒SOHC+ターボ | |
ボア×ストローク(mm) | 95.0×70.4 | 97.0×74.4 |
総排気量(cc) | 2994 | 3299 |
燃料供給 | ボッシュKジェトロニック | |
圧縮比 | 6.5 | 7.0 |
最高出力(PS/rpm) | 260/5500 | 300/5500 |
最大トルク(kgm/rpm) | 35.0/4000 | 43.8/4000 |
エンジン搭載位置 | リア縦置き | |
駆動方式 | 後輪駆動 | |
トランスミッション | 4速MT(1989年モデルのみ5速MT) | |
0→100km/h加速(秒) | 5.2 | 5.4 |
0→400m加速(秒) | 14.0 | |
0→1000m加速(秒) | 24.0 | 24.0 |
最高速度(km/h) | 250 | 260 |
ステアリング | ラック&ピニオン | |
サスペンション | マクファーソンストラット(F)、セミトレーリングアーム(R) | |
ブレーキ | 前後ベンチレーテッド・ディスク | |
ホイール | J×15(F)、J×15(R) | J×16(F)、9J×16(R) |
タイヤ | 185/70VR15(F)、215/60VR15(R) | 205/55ZR16(F)、245/45ZR16(R) |
乗員定員(名) | 2+2 |
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