Porsche 996Turbo


先代モデルである993ターボの最後の1台がラインオフしてから1年半後の、1999年9月のフランクフルト・ショーで発表された。
ベースとなる996が水冷になったため、このターボもエンジンは水冷水平対応6気筒DOHC24バルブとなる。
GT3と同じボア100mm×ストローク76.4mmで、それに993ターボと同じ左右各バンク独立したKKK社製ツインターボチャージャーと
インタークーラーをドッキング。最高出力420PS/6000rpm、最大トルク57.1kgm/2700〜4600rpmを発揮する。
エンジンはモジュラー型の設計になっており、各シリンダーバンクに対し1個のシリンダーハウジングという構造になっている。
それにシリンダーヘッドとカムシャフトハウジングが組み合わされ、このユニットをアルミダイキャスト製クランクケースに
ボルトで接合するという、NAの996エンジンとは異なる、かなり凝った作りとなっている。この構造には、排気量の拡大など、
仕様変更にも対応しやすいというメリットがある。ターボは先代モデルの993ターボ同様、左右のバンクを独立させて
過給するパラレルタイプ採用。その過給圧をコントロールするのはDMEエンジンマネージメント・システムで、
モトロニックME7.8に進化している。このDMEから信号が送られ、アクチュエーターを制御し、過給圧をコントロール。
過給圧1.8バール、2700rpmを超えると開き、さらに回転数を上昇させた場合、圧力は低下して最高出力発揮時には
1.65バールになるように設定されている。また、ポルシェ自慢の可変吸気システムのバリオカムがバリオカム・プラスに進化している。
従来までの可変バルブタイミング・システムにバルブリフトコントロール・システムを組み込んだもので、
インテーク側の2個のカップタペットを電動油圧スイッチバルブで作動させ、インテーク側のカムシャフトに設けられた
高回転用/低回転用のカムを切り換える仕組みになっている。組み合わされるミッションは、6速MT。ギアケースやマウント、
デフが新設計となったダブルマスフライホイールタイプで、強化ギヤシフトケーブルを採用するなど、
タッチやフィール、剛性が向上している。オプションだが、ターボモデルとしてははじめて5速オートマチックのティプトロSも用意された。
シフトプログラムが無段階になっており、Dモードのままでも一時的にマニュアル操作が可能。アダプティブ制御が
進化しており、走行状況やドライバーの走り方にあわせて、最適なギヤを選択する。なお、設計はポルシェだが、
製造はダイムラー・クライスラー社が行っている。最高速度は6速MTで305km/h、ティプトロSでは298km/hに達する。

カレラ4と共通の4WDシステムを採用しているが、フロントに備えたビスカスカップリングを介して前輪へトラクションを伝える、
スタンバイタイプ。通常は5%だが、走行状態に応じて、最大で40%のトラクションをフロントへ伝達する。この4WDシステムはわずか
55kgしかなく、この種のシステムとしてはかなり軽い。万一、コーナリング中などにオーバーステア、アンダーステアに
陥った場合、ポルシェ・スタビリティ・マネジネント(PSM)が作動。ABSやトラクションコントロール、オートマチック・
ブレーキ・デファレンシャルなど、さまざまなシステムを駆使し、ニュートラルな状態に回復させる。サスペンションはフロントがストラット、
リアがマルチリンクというレイアウトは変わらないが、カレラ4と同様にフロントストラットの位置をずらしてドライブシャフトを通している。
さらに、マウントやブッシュ類、リアのトラックコントロールアーム、ダンパー、スプリングなどはGT3のものを使用。
車高が10mmダウン、フロントがトレッド10mm、リアがトレッド40mm拡大されているので、サスペンション全体のセッティングも
大幅に見直されている。ブレーキは前後ともベンチレーテッド・ディスクで、「PORSCHE」のロゴが入った4ポットの
アルミニウムモノブロックキャリパーにABSが組み合わされる。フロントは330mm×34mm、リアは330mm×28mmで、
100→0km/hが3秒以内というストッピングパワーを可能にする。なお、強力なポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ(PCCB)は、
このモデルのみオプション装着が可能。鋳鉄ディスクと同じサイズながら、重量はその半分以下であり、車両全体で
約20kg軽量化することができる。さらに、制動距離も大幅に短縮できるほか、磨耗も少なく、その寿命は30万kmという
高い耐久性もポイント。ホイールは、専用デザインの中空スポークタイプを採用。フロントが8J×18、リアが11J×18(R)。
タイヤはミシュラン社のパイロット・スポーツで、フロント225/40ZR18、リア295/30ZR18を履く。

ボディは996をベースとしているが、ターボ専用。18インチのタイヤとホイールを収めるため、全幅はフロント40mm、リア65mm
ワイドになっている。前面投影面積が増えたということは空気抵抗の増大につながるが、ポルシェは車高を10mm下げることで、
この問題に対応。また、ボディ下部に流れるエアの減少にもつながり、フロントにかかる揚力も減らすことに成功している。
Cd値はノーマルの996を0.01上回る、0.31に抑えられている。フロントノーズはノーマルの996とは異なる
デザインとなっており、3つのエアインテークが設けられている。左右はブレーキ冷却用で、中央はラジエーター冷却用。
このラジエーターはノーマルの996よりも表面積が50%以上増大しており、それにともなってクーリングファンとクーラントポンプも
強化されている。ノーズには、リップスポイラーが追加されている。ヘッドライトの形状はターボ専用のデザインとなっており、
バイキセノンを採用。1個のライトでローとハイの切り換えができるようになっている。また、70mm径のレンズにより
広範囲に照らすことできるほか、加速時の車体の変化にも高さを自動調整する機能も備わる。リアフェンダー前のインテークは、
インタークーラー冷却用。993型のGT2では、リアウイング部分にインテークが設けられていたが、この996ターボでは
インタークーラーのマウント位置が左右各バンクの上に移動。スムーズにエアが流れるように、この位置となった。
一部はブレーキの冷却用として、フェンダー後部の下にあるスリットから排出される。リアウインドウもノーマルより大きく、
テールランプは、2段になり大型化されている。リアウイングは小型となったが、実は2枚式。速度感応タイプで、
120km/hになると自動的にせり上がり、60km/h以下で収納される。作動はスイッチでも可能。

室内は、フラッグシップにふさわしいものになっている。シート、インパネ、ドア、リアサイドはオールレザーで、
メモリー付電動シート(運転席のみ)、オンボードコンピュータが標準装備となっている。レザーは5色から選択可能。
インパネはオーソドックスなポルシェタイプだが、タコメーターのデジタル表示は下に移動され、代わりに
車両の情報を表示するオンボードコンピュータのディスプレイが組み込まれている。ロッカーパネルには「Turbo」のロゴが配され、
ステアリングは3本スポークを採用。シートは電動アジャスタブルタイプで、ドライバー側はメモリー機能を採用。
インジェクションキーによって、シートポジションとドアミラーの位置を4種類セットできる。前後フードのレバーが電動式になり、
キーにはトラクションオープナーが備わる。運転席・助手席に加え、サイドにもエアバッグが装備された。
日本には2000年モデルから導入された。ポルシェ・ジャパンが発表した当時の価格は、6速MTが1680万円。ティプトロSが1760万円。





専用デザインのヘッドライト

18インチのホイール

インタークーラー用エアスクープ

速度可変式リアスポイラー

■Specification
発表年 1999
生産年 1999〜
シャシー モノコック
全長×全幅×全高(mm) 4435×1830×1295
ホールベース(mm) 2350
トレッド前後(mm) 1470/1530
車両総重量(kg) 1530
エンジン 水冷水平対向6気筒DOHC4バルブ+ツインターボ
ボア×ストローク(mm) 100.0×76.4
総排気量(cc) 3600
燃料供給 モトロニックME7.8
圧縮比 9.4
最高出力(PS/rpm) 420/5700
最大トルク(kgm/rpm) 57.1/2700〜4600
エンジン搭載位置 リア縦置き
駆動方式 フルタイム4WD
トランスミッション 6速MT/5速AT
変速比 1速
      2速
      3速
      4速
      5速
     後退
最終減速比
3.82
2.05
1.41
1.12
0.92
0.75
3.44
0→100km/h(秒) 4.2
最高速度(km/h) 305
ステアリング ラック&ピニオン
サスペンション ストラット(F)、マルチリンク(R)
ブレーキ 前後ベンチレーテッド・ディスク
ホイール 8J×18(F)、11J×18(R)
タイヤ 225/40ZR18(F)、295/30ZR18(R)
乗員定員(名) 2+2

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