Carrera GT
2000年9月のパリ・サロンでプロトタイプが発表され、2001年1月のデトロイト・ショーを経て、
2003年のジュネーブ・ショーで市販モデルが公開された、ポルシェ初のグランドエフェクトカー。
フロントウインドウの傾斜角度、ウインカーなどのデザインに若干の修正を受けたが、ほぼプロトタイプのままのデザインで市販された。
当初はオープンとクローズドの2タイプのモデルが存在すると予想されたが、着脱式ルーフボディで登場した。
これまでのポルシェ車とはまったく違うデザインのボディは、最高水準のエアロダイナミクスが駆使されており、Cd値は0.39。
ボディ下部にはCFRP製のアンダーカウルが装着され、ヴェンチュリートンネルによって強力なダウンフォースを生み出す。
複雑な形状を持つこのアンダーカウルは5つのパートに分かれており、リアタイヤ付近ではディフューザーとなっている。
330km/h時には、2846Nのダウンフォースを発生し、前後30:70の理想的な割合でダウンフォースが配分される。
なお、軽量化のため、アンダーフロアにはアンダーコートは施されていない。シャシーは軽量で強固なCFRPモノコックタブ構造で、
フェラーリのF1マシンのボディも手掛けるイタリアのカーボンスペシャリストATR社によるデザインとなっている。
このモノコックタブの後方にエンジンと横置きトランスミッションを載せたCFRP製のサブフレームを12本のボルトで接合する。
エンツォ・フェラーリもCFRPモノコックタブを採用しているが、サブフレームもCFRP製というのは、量産車としては世界初。
このサブフレームはエンジンルームを囲うようにデザインされている。モノコックタブとあわせても、重量は約100kgしかない。
フロント・サスペンションは、インボードタイプ。鍛造アルミニウム製のコントロールアームは、一般的なラバー製のブッシュではなく、
ボルトによってモノコックに直接接合されている。リアのサスペンションも、サブフレームにマウントされる。
モノコックタブにはフロントウインドウフレーム、ロールオーバー構造が組み込まれており、走行中の応力はすべて
この基本構造体が受け持つ。そのため、ボディパネルは純粋なカウルであり、CFRPを使って徹底した軽量化が行われている。


過去のコンペティションモデルのディティールを受け継いでいるボディパネルは、CFRP製。ポルシェによると、ヘッドライトは917、
フロントフェンダーは718RSKスパイダーをモチーフにしたという。フロントのインテークは、中央が大型ラジエーター用で、
左右がサイドのラジエーターとブレーキ冷却用。フロントフェンダーの後方には、タイヤハウス内のエア抜き用
エアアウトレットが設けられている。ワイパーは大型のシングルタイプを採用。ドアミラーのステーは、専用デザインで
空力を重視したV字型となっている。ルーフは中央部がややへこんでいるが、これは少しでも前面投影面積を減らし、
エアロダイナミクスを向上させることを目的としている。カーボン製のルーフは、二分割式でワンタッチで着脱することができる。
長さ74cm、幅57cmで,、重量はわずか2.4kgしかない。外したルーフは、フロントのトランクルーム内に革紐で
固定して収納することができる。リアフェンダー前のエアインテークは、エンジン、トランスミッション、エアコンのコンデンサー、
リアブレーキの冷却用。エンジンフードには、パワードームと呼ばれるステンレス製のネットが張られている。
放熱効果を高めるとともに、外からエンジンを見ることができる。リアのウイングは速度可変式で、120km/hに達すると5秒以内に
160mmアップし、ダウンフォースが30%増加するという。80km/h以下になると、自動的に収納される。
手動でもアップ/ダウンは可能。エキゾーストは、左右2本出し。その下にはディフューザーが装着されている。

ミッドに縦置き搭載されるエンジンは、新開発の軽量アルミブロック製水冷V型10気筒DOHC。M80型と呼ばれ、
かつてポルシェがル・マン24時間レースのために開発していたものがベースとなっている。しかし、排気量は、
実用域でのトルク特性を重視し、ボアを拡大し、5.5リットルから5.7リットルに変更。ボア×ストロークは98mm×76mmの
ショートストローク型で、アルミニウム製のヘッド/ブロック、チタン製のクランクケ−ス/コンロッドなど、
軽量化が施されており、重量はわずか128kg。エンジンブロックには、レースでのノウハウを生かした
クローズドデッキ構造が採用されている。シリンダー内部はニカシルコーティング処理され、
シリンダーの冷却はその周囲のクーラント・チャンバーによって行われる。潤滑方式はドライサンプで、
エンジンは可能な限り低い位置に搭載。V10エンジンの場合、バンク角は72度がベストバランスだが、ポルシェは
エンジンの幅を抑えるために68度を選択した。無段階式カムシャフト・タイミング・コントロール機構のバリオカムが採用されており、
最高出力612/8000rpm、最大トルク60.2kgm/5750rpmを発揮。最高速度は330km/hで、パワーウエイトレシオは
レーシングカー並みの2.26kg/PSになる。このパワーユニットに組み合わされるミッションは、6速MTのみ。
ベンチュリートンネルを理想的な形状にするとともに、重量配分を考慮して、横置きで搭載される。クラッチには、PCCC(ポルシェ・
セラミック・コンポジット・クラッチ)と呼ばれる、世界初のセラミックディスクを採用。クラッチ自体の重量が軽くなったほか、
プレートも直径169mmと通常の240mmよりもかなりコンパクト。エンジンの搭載位置も低くなり、重心低下にも貢献している。
サスペンションは、前後ともプッシュロッド式のダブルトラック・コントロールアームを採用。
プッシュロッドはステンレス製、ウィッシュボーンは鍛造アルミニウム製で、ダンパーとスプリングはザックス社との共同開発したもの。
フロントのサスペンションは、鍛造アルミニウム製のコントロールアームをモノコックに支持。リアのサスペンションは、
サブフレームにマウントされる。ザックス社のダンパーとハート社のスプリングが採用されているが、電子制御は導入されておらず、
オーソドックスなコイルダンパーユニットのみであらゆる条件をカバーする。ブレーキは前後ともベンチレーテッド・ディスクで、
6ピストンキャリパーを採用。このキャリパーは、イエローでカレラGT用の新設計。さらに、911GT2でオプション設定された
PCCB(ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ)が標準で装備される。鉄の1/3の重量しかないが、
寿命はクルマよりも長いという。1400度の高熱にも耐えられるほか、ベンチレーテッドタイプのディスクはドリルホール付で、
らせん状のクーリングダクトも装備されている。ディスク径は前後とも380mmで、GT2/GT3よりも30mmも大型。
ABSとASC(アンチ・スピン・コントロール)も標準で装備される。ホイールは、特殊な製造方法で成型された
5本スポークの鍛造マグネシウム製センターロックを採用。一般的な鍛造アルミよりも、25%ほど軽くなっている。
受注を受けたのはドイツのBBS本社だが、製造は日本BBS(ワシマイヤー)社が担当。F1のマグネシウムホイールと同じで、
鍛造行程からリム部を作り出すスピニングまでを日本で行い、切削加工、仕上げ、塗装をドイツ工場で行っている。
サイズは前後で異なり、フロントが9.5J×18、リアが12.5J×20。空気圧センサーが内蔵されているほか、締め付けトルク方向が
異なるので、間違えないようにセンターキャップは右がレッド、左はブルーというように、カラーを変えてある。タイヤは、
ミシュラン社のパイロットスポーツか、ピレリ社のPゼロ・ロッソが装着される。サイズは、フロントが265/35ZR19、リアは335/30ZR20。
エキゾーストは左右2本出しで、ツインチャンバーシステムが装備されている。

インテリアは他のポルシェ車と共通のイメージを持つが、高級レザー、カーボン、マグネシウムを効果的に使い分けることにより、
ラグジュアリーな雰囲気に仕上げられている。ステアリングは、本革製2トーンカラーの3本スポーク。メーターは
ポルシェ伝統のデザインで、センターに8400rpmからレッドゾーンになるタコメーター。その左に380km/hまでのスピードメーターと、
油温計、右に水温計/燃料計、油圧計が並ぶ。CFRP製のフレームからなる専用設計のフルバケットタイプのシートは、
わずか10.7kg。GT3のバケットシートが13.1kgであり、ノーマルの911のシートと比較しても、半分の重さしかない。
ポジション調整は手動による前後スライドのみ可能で、リクライニング/ハイトの調整はできない。また、カーボンファイバーによる
複合素材とアラミド繊維を併用しており、破損してもパーツが飛び散らない構造になっている。クラッチ、ブレーキ、アクセルの
各ペダルはアルミの削り出しで、床から生えるオルガン式で取り付けられている。運転席と助手席を分断する
センターコンソールは背が高く、それにともなってシフトレバーも高い位置にある。最近のスーパースポーツはセミATが多いが、
ステアリングのすぐ右下にあるので、シフトチェンジの際のロスは少ない。シフトノブは、樺材とアッシュ材を
何層にもサンドイッチして成形したウッド製を採用。これは、ル・マンを制した917が軽量化のために
バルサ材を用いたのに習っている。シフトノブの上方には、トラクションコントロールのカットスイッチ、リアウイングの昇降スイッチ、
ドアロックスイッチが配置される。シフトノブの下方には、パワーウインドウ、エアコンの温度調節、風量、
ベンチレーションの吹き出し位置選択のスイッチがレイアウトされている。ドアのインナーは、カーボン製のパネルに
マグネシウム製のグリップを組み合わせた軽量設計。上部には、専用の本皮製ブリーフケースを収納することができる。

1500台の限定生産。使用されるCFRP製パーツはすべて、ポルシェ社内で製作される。パーツによっては成型に400以上もの工程と
1週間という期間がかかるものもある。エンジンなどの主要コンポーネントはツッフェンハウゼン工場で生産され、旧東ドイツの
ライプツィヒ工場で最終的に組み立てられる。実際の製作は、ほとんどハンドメイドによる。そのため、ラインオフまでに3ヵ月の期間がかかる。




バイキセノンヘッドライト


フロントフード


V字型ステーのサイドミラー


左右で色が違うセンターキャップ


Fフェンダー後方のアウトレット

Rフェンダー前のインテーク

速度感応式のリアウイング

リアエンドのディフューザー


■Specification
発表年 2003
生産年 2004〜
生産台数 1500
シャシー CFRPモノコック
全長×全幅×全高(mm) 4613×1921×1166
ホールベース(mm) 2730
トレッド前後(mm) 1612/1587
車両総重量(kg) 1380
エンジン 水冷68度V型10気筒DOHC
ボア×ストローク(mm) 98.0×76.0
総排気量(cc) 5733
燃料供給 電子制御式燃料噴射ボッシュモトロニックM7.1.1
圧縮比 12.0
最高出力(PS/rpm) 612/8000
最大トルク(kgm/rpm) 60.2/5750
エンジン搭載位置 ミッドシップ縦置き
駆動方式 後輪駆動
トランスミッション 6速MT
変速比 1速
      2速
      3速
      4速
      5速
      6速
      後退
最終減速比
3.20
1.87
1.36
1.07
0.90
0.75
2.19
2.19
0→100km/h(秒) 3.9
0→1000m(秒) 20.0
最高速度(km/h) 330
ステアリング ラック&ピニオン
サスペンション 前後ダブルトラック・コントロールアーム
ブレーキ 前後ベンチレーテッド・ディスク
ホイール 9.5J×19(F)、12.5J×20(R)
タイヤ 265/35ZR19(F)、335/30ZR20(R)
乗員定員(名) 2

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