Porsche Carrera RS 2.7
1973年から始まる世界選手権2.5〜3リッタークラスのグループ4スペシャルGTのホモロゲーションを取得するため、
前年の1972年に誕生した。社内コードは911SC2.7だが、通称「ナナサン・カレラ」と呼ばれる。「カレラ」は、スペイン語でレースを意味する。
「サーキットの狼」主人公の風吹ユウヤのライバル、早瀬左近の愛車でもある。
ホモロゲーション規定の最低重量900kgに近づけるため、フロントウインドウはグラバーベル社製の
薄い安全ガラスに変更され、前後のバンパーはFRP、ボディパネルは薄板スチール/FRP、リアシートは軽量プラスチックを採用。
風洞実験を経てデザインされたオイルクーラー内臓のフロントエアダムと、「ダックテール」と呼ばれる
FRP製エンジンフードによりCd値が向上するとともに、リアグリップを高め、前後の圧力比は重量配分と同じ45:55になった。
エンジンは、911Sの水冷水平対向6気筒をチューンしてリアに搭載。ボアを90mmに拡大し、2.7リットルにするとともに、シリンダーは
従来の鋳鉄ライナーをアルミで鋳込んだバイラルではなく、レーシングカーの917にも使われた
ニカシル(動面にニッケルとシリコンカーバイトの電気メッキ層をつけた合金シリンダー)に変更。
それにより、最高出力210PS/6300rpm、最大トルク26.0kgm/5100rpmを発揮し、最高速度245km/hを可能にした。
サスペンションは、フロントがマクファーソン式で、ビルシュタイン製のストラットを採用し、
スタビライザーは15mm。リアサスペンションは、セミトレーリングアーム。曲げ剛性をためるため、
クロスチューブはボディにリジットマウントされたブラケットを介して車体中心に固定する方式が取られた。
ブレーキは前後ともディスクで、ホイールは新デザインの5スポーク鍛造で、フロントは6J×15、リアは7J×15。
タイヤは、ピレリ社のCN36で、サイズはフロント185/70VR15、リア215/60VR15。
外観は、「ダックテール」と呼ばれるFRP製エンジンフード、サイドの「Carrera」ストライプ、
オイルクーラーが入るように設計されたフロントのFRP製バンパー、新デザインの5スポーク鍛造アルミホイールなどが特徴。
リアタイヤに60扁平タイヤを採用したことにより、フェンダーも張り出している。標準のボディカラーは、
グランプリホワイトだが、オプションで他のカラーを選ぶこともできた。サイドの「Carrera」、ダックテール部の「CarreraRS」、
エンジンフードの「PORSCHE」の文字は、レッド、ブルー、グリーン、ブラックの4色があり、ホイールも同色にされた。
なお、輸出先の法定やオーナーの意向によってダックテール、Carreraストライプのないモデルも存在する。
このタイプはフロント/リアフードがアルミ製、ドアも軽量のものに変更され、リアフードに「CarreraRS」のエンブレムが
装着されている(通常はダックテール下部に「CarreraRS」とペイントされている)。インテリアは、
普通の911と変わらないが、小径のステアリング、300km/hまで刻まれたスピードメーターが異なる。
当初はグループ4の規定を満たす500台の生産予定だったが、3300マルクという高額にもかかわらず
発表直後からオーダーが殺到し、わずか3ヵ月で完売。最終的に1580台が生産され、グループ3のホモロゲーションまで取得した。
ツーリング、スポーツ、レーシングという3つのバージョンがあり、ツーリングは標準で、パワーウインドウをはじめ、
他の911並みの装備となっている。スポーツはライトウエイト仕様で、シートが変更されているほか、快適装備、遮音材、
アンダーコートが省略され、車重は960kgに抑えられている。レーシングは文字通りレース仕様で、徹底した軽量化と足回りの
セッティングが見直されている。ツーリングは1324台、スポーツは200台、レーシングは56台が生産された。
レースには1972年11月3日のツール・ド・コルスでデビュー。1973年は、マルティニ・チーム1台、プロトタイプ1台の2台で10戦に出場。
デイトナ24時間は1位、バレルンガ6時間は5位、ディジョン1000kmはリタイヤ、モンツァ1000kmは4位、スパ1000kmは5位、
タルガ・フローリオは1位、ニュルブルクリンク1000kmは5位、ル・マン24時間は4位、オーストラリア1000kmは8位、
ワトキンス・グレン6時間は7位と、合計27点を獲得し、見事総合優勝を獲得するなど、数々のレースで優秀な成績を収めている。
発表年 | 1972 |
生産年 | 1972〜1973 |
生産台数 | 1580 |
シャシー | モノコック |
全長×全幅×全高(mm) | 4147×1662×1320 |
ホールベース(mm) | 2271 |
トレッド前後(mm) | 1372/1394 |
車両総重量(kg) | 960 |
エンジン | 水平対向6気筒SOHC |
ボア×ストローク(mm) | 90.0×70.4 |
総排気量(cc) | 2687 |
燃料供給 | ボッシュ機械式プランジャー噴射 |
圧縮比 | 8.5 |
最高出力(PS/rpm) | 210/6300 |
最大トルク(kgm/rpm) | 26.0/5100 |
エンジン搭載位置 | リア |
駆動方式 | 後輪駆動 |
トランスミッション | 5速MT |
変速比 1速 2速 3速 4速 5速 最終減速比 |
3.182 1.834 1.261 0.925 0.724 4.429 |
最高速度(km/h) | 245 |
ステアリング | ラック&ピニオン |
サスペンション | マクファーソンストラット(F)、セミトレーリングアーム(R) |
ブレーキ | 前後ディスク |
ホイール | 6J×15(F)、7J×15(R) |
タイヤ | 185/70VR15(F)、215/60VR15(R) |
乗員定員(名) | 2 |
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